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記憶と目撃証言子どもの証言はどこまで信頼できるか。決め手は年齢より「聞き方」だった

子どもが事件について話したとき、その言葉はどこまで信頼できるのでしょうか。「子どもは嘘をつかない」という見方も、「子どもの話はあてにならない」という見方もあります。研究は、そのどちらでもない答えを示しています。
SUMMARY
- 3〜6歳の176人の実験では、誘導する質問を繰り返し受けた子どもは、事実でない出来事を多く語った。誘導のない聞き取りを受けた子どもは正確だった。
- 子どもの暗示へのかかりやすさの研究をまとめた総説は、年齢による差は確かにあるが、幼い子どもも事件に関わる多くのことを思い出せると結論した。
- 構造化された聞き取りの手順(NICHDプロトコル)を使うと、開かれた質問は少なくとも3倍に増え、誘導的な質問は約半分に減った。
01どんな心の仕組みが働いているのか
子どもは、大人の質問の中にある「答えのヒント」に合わせてしまいやすいです。これを被暗示性(暗示にかかりやすさ)と呼びます。
特に6歳以下の子どもでは、「はい・いいえ」で答える質問や選択肢を示す質問の危うさが大きいとされます。質問の中に大人の思い込みが入ると、子どもの答えもそちらに引っぱられます。
研究者は、こうしたかかりやすさの要因を、認知・社会・生物学の3つのまとまりで整理しています。一方で、自由に話してもらう質問なら、幼い子どもでも多くを正しく語れます。
02研究でわかっていること
年齢による差はありますが、子どもの記憶そのものより、質問の仕方が証言の正確さを大きく左右します。
Ceci・Bruck(1993)[1]
20世紀初めからの子どもの証言の研究を振り返った総説。暗示へのかかりやすさには、認知・社会・生物学の3つの要因があると整理した。年齢による差は確かにあるが、とても幼い子どもでも、事件に関わる多くのことを思い出せると結論した。
対象: 過去の研究 / 限界: 1993年時点のまとめで、その後の研究は含まない。
Leichtman・Ceci(1995)[2]
3〜6歳の176人が、見知らぬ男性が訪れる出来事を体験した。その後、何度も聞き取りを受けた。誘導のない子どもは正確に話した。男性について事前に悪い印象を与えると事実でない話が少し増え、誤った示唆を含む質問では大きく増えた。両方を受けた子どもは、事実でない話が特に多かった。年長の子どもほど影響は小さかった。
対象: 3〜6歳の幼児 / 限界: 実験の出来事は、実際の被害体験とは異なる。
Lambら(2007)[3]
NICHDプロトコル(米国の研究機関が作った子どもの聞き取り手順)の研究をまとめた総説。手順を使う聞き手は、使わない場合より開かれた質問が少なくとも3倍多く、誘導的な質問は約半分だった。未就学児でも、重要な情報の約半分と、最初の被害の打ち明けの8割超が、「話して」と促す自由な質問への答えから得られた。
対象: 実際の司法面接 / 限界: 手順を開発した研究者自身による総説。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「子どもの話はあてにならない」も「子どもは嘘をつかない」も単純すぎます。聞き方しだいで、どちらにもなりえます。
04日常で生かせる視点
子どもの話を聞くときは「何があったの?全部話して」と開かれた質問から始め、答えを先に言わないことが大切です。
- ニュースで子どもの証言が争点になったら、最初にどんな聞き方をされたかに注目する。
- 裁判員になったら、聞き取りが録画され、開かれた質問から始まっていたかを確かめる。
- 家庭で子どもに出来事を聞くときは「〇〇されたの?」ではなく「それからどうしたの?」と聞く。
05よくある質問
子どもは大人より誘導されやすいのですか
研究では、年齢による差があり、特に未就学の子どもは暗示の影響を受けやすいとされます。ただし聞き方を工夫すれば多くを正しく話せます。
NICHDプロトコルとは何ですか
子どもへの司法面接のための構造化された手順です。開かれた質問をできるだけ使い、誘導的な質問は必要なときだけに限ります。
開かれた質問とは何ですか
「何があったか全部話して」のように、答えの内容を決めずに自由に話してもらう質問です。「はい・いいえ」で答える質問と対になります。
SOURCES
- Ceci, S. J., & Bruck, M. (1993). Suggestibility of the child witness: A historical review and synthesis. Psychological Bulletin, 113(3), 403-439. https://doi.org/10.1037/0033-2909.113.3.403
- Leichtman, M. D., & Ceci, S. J. (1995). The effects of stereotypes and suggestions on preschoolers' reports. Developmental Psychology, 31(4), 568-578. https://doi.org/10.1037/0012-1649.31.4.568
- Lamb, M. E., Orbach, Y., Hershkowitz, I., Esplin, P. W., & Horowitz, D. (2007). A structured forensic interview protocol improves the quality and informativeness of investigative interviews with children: A review of research using the NICHD Investigative Interview Protocol. Child Abuse & Neglect, 31(11-12), 1201-1231. https://doi.org/10.1016/j.chiabu.2007.03.021


