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パーソナリティと犯罪怒りは「発散」すればおさまるのか。154研究のまとめが示した、殴るより落ち着くほうが効く理由

「怒りはため込まずに吐き出したほうがいい」。クッションを叩く、大声を出すといった発散法は、よく勧められます。でも、発散は本当に怒りを小さくするのでしょうか。実験やメタ分析の結果は、この常識とは反対の方向を指しています。
SUMMARY
- 怒らされた人がサンドバッグを叩きながら相手のことを考えると、何もしない人より怒りが強く、攻撃的にもなった。
- 「攻撃的な行動は怒りを解消する」という文章を読んでからサンドバッグを叩いた人は、その後、より攻撃的にふるまった。
- 154の研究(10,189人)をまとめたメタ分析では、興奮を静める方法は怒りと攻撃を減らした(g = -0.63)が、興奮を高める方法には効果がなかった(g = -0.02)。
01どんな心の仕組みが働いているのか
怒りを発散すればすっきりする、という考えを「カタルシス説」と呼びます。しかし実験では、発散するとかえって怒りが続きやすくなりました。
カタルシスとは、心にたまったものを外に出して浄化するという考え方です。怒りを圧力鍋の蒸気のようにとらえ、抜けば楽になるとイメージします。
ところが、叩きながら相手のことを考えると、怒りの原因を何度も思い返すことになります。これを「反すう」と呼びます。反すうは怒りを冷ますどころか、燃料を足すように働くと考えられています。
02研究でわかっていること
発散は怒りを減らさず、むしろ強めることがありました。効果がはっきりしたのは、呼吸や瞑想など、体の興奮を静める方法です。
Bushman(2002)[1]
怒らせた参加者に、サンドバッグを叩きながら相手のことを考えてもらうグループと、体を鍛えることを考えてもらうグループ、何もしないグループを比べた。相手のことを考えながら叩いた人は最も怒りが強く、相手に大きな音を浴びせる攻撃も最も多かった。何もしないほうが、発散より効果的だった。
対象: 実験参加者 / 限界: 実験室での短時間の測定で、日常の怒りとは場面が異なる。
Bushmanら(1999)[2]
「攻撃的な行動は怒りを解消するよい方法だ」という文章を読んだ人は、反対の内容を読んだ人より、サンドバッグを叩きたがった。さらに、その文章を読んでから実際に叩いた人は、その後の課題でより攻撃的だった。発散を信じることが、攻撃を後押しする形になった。
対象: 実験参加者 / 限界: 実験室での攻撃の測定で、現実の暴力とは異なる。
Kjærvik・Bushman(2024)[3]
怒りの対処法を調べた154の研究(184の独立した集団、10,189人)をまとめた。深呼吸、マインドフルネス、瞑想など興奮を静める方法は、怒りと攻撃を減らした(g = -0.63)。叩く、走るなど興奮を高める方法は、全体として効果がなかった(g = -0.02)。静める方法は、犯罪をした人を含むさまざまな人で効いていた。
対象: 154の研究 / 限界: 興奮を高める方法の結果はばらつきが大きく、一律には言えない。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「怒りはため込むより発散」は誤解です。発散で怒りが燃え続けることがあり、静めるほうが効果的でした。
04日常で生かせる視点
怒りを感じたら、「発散する」より「熱を下げる」ことを意識すると、言動を選び直す余裕が生まれます。
- 事件の報道で「怒りを発散させていた」とあっても、発散が怒りを解消するとは限らないと知っておく。
- 裁判員として判断するとき、「カッとなった」という説明だけでなく、怒りが続いた経過にも目を向ける。
- 家族や同僚とぶつかったら、言い返す前にゆっくり呼吸し、少し時間をおいてから話す。
05よくある質問
カタルシス効果とは何ですか
心にたまった怒りなどを外に出すと、すっきりして気持ちが軽くなるという考え方です。怒りについては、実験で支持されていません。
怒ったときにサンドバッグを叩くのは逆効果ですか
2002年の実験では、相手のことを考えながら叩いた人は、何もしない人より怒りも攻撃も強くなりました。
怒りを静めるのに効果がある方法は何ですか
154の研究のまとめでは、深呼吸、マインドフルネス、瞑想など、体の興奮を静める方法が怒りと攻撃を減らしていました。
SOURCES
- Bushman, B. J. (2002). Does Venting Anger Feed or Extinguish the Flame? Catharsis, Rumination, Distraction, Anger, and Aggressive Responding. Personality and Social Psychology Bulletin, 28(6), 724-731. https://doi.org/10.1177/0146167202289002
- Bushman, B. J., Baumeister, R. F., & Stack, A. D. (1999). Catharsis, aggression, and persuasive influence: Self-fulfilling or self-defeating prophecies? Journal of Personality and Social Psychology, 76(3), 367-376. https://doi.org/10.1037/0022-3514.76.3.367
- Kjærvik, S. L., & Bushman, B. J. (2024). A meta-analytic review of anger management activities that increase or decrease arousal: What fuels or douses rage? Clinical Psychology Review, 109, 102414. https://doi.org/10.1016/j.cpr.2024.102414


