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刑罰と更生人はなぜ犯罪をやめるのか。結婚・仕事・年齢という「転機」と、58研究が問い直した結婚効果

罪を重ねていた人が、あるときから犯罪をしなくなる。犯罪学では、この過程を「デシスタンス(犯罪からの離脱)」と呼びます。何がきっかけになるのか、長い追跡研究と、その見直しから見ていきます。
SUMMARY
- デシスタンス研究をまとめた2001年の論文は、犯罪をやめることと確かに結びつく要因として、良い結婚、安定した仕事、自己像の変化、年齢を挙げた。
- 結婚と犯罪に関する58の研究を見直した2015年のレビューでは、多くが結婚後に犯罪が減ることを示したが、結婚が原因だと示した研究は1つもなかった。
- 130人の財産犯を出所前から10年後まで追った研究では、出所前の本人の気持ちや考え方が、出所後の再犯に直接影響し、出所後の生活環境を通じても影響していた。
01どんな心の仕組みが働いているのか
犯罪をやめるのは、ある日の決心だけでなく、年齢を重ねる中で、人間関係や役割、自分の見方が少しずつ変わっていく過程だと考えられています。
研究者は、犯罪が止まった「時点」と、そこに至る「過程」を分けて考えます。後者がデシスタンスです。急にやめる人もいれば、行きつ戻りつしながら離れていく人もいます。
人生の流れを変える出来事は「転機」と呼ばれます。結婚や仕事は、毎日の過ごし方や付き合う人を変え、「失いたくないもの」をつくります。同時に、「自分はもう以前の自分ではない」という見方の変化も大切だとされます。
02研究でわかっていること
年齢とともに犯罪が減ること、仕事や結婚がそれと結びつくことはよく確かめられています。ただ、何が原因で何が結果なのかは、まだ解明の途中です。
Laubら(2001)[1]
デシスタンス研究を整理した論文。犯罪をやめることと確かに結びつく要因は少数で、良い結婚、安定した仕事、自己像の変化、年齢がその代表だとした。犯罪以外の問題行動をやめる過程とも似ていると指摘し、人生の流れ全体から理解する見方が最も説得力があると論じた。
対象: 既存研究の整理 / 限界: 新しいデータの分析ではない。
Skardhamarら(2015)[2]
結婚と犯罪に関する58の研究を見直した。多くの研究で、結婚後に犯罪が減る関連が見られ、男性でより一貫していた。夫婦の結びつきが強いほど関連も強かった。しかし、結婚が犯罪を減らすという因果を示した研究はなく、犯罪の減少が結婚より先に起きていた例もあった。
対象: 58の縦断研究 / 限界: 結婚の形が変わり、昔の研究が今に当てはまるとは限らない。
LeBelら(2008)[3]
1990年代に面接した男性の財産犯130人を、10年後まで追跡した。出所前に測った本人の気持ちや考え方は、出所後の再犯に直接影響していた。また、出所後に経験する生活状況を通じても、間接的に影響していた。
対象: 英国の男性の財産犯130人 / 限界: 対象が少なく、男性の財産犯に限られる。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「結婚すれば犯罪をやめる」は言いすぎです。結婚と犯罪の減少の関連は確かですが、変わり始めた人が結婚する、という逆の流れもあり得ます。
04日常で生かせる視点
立ち直りは一度の決心ではなく、時間のかかる過程です。本人の変化と、それを受け止める周りの環境の両方に目を向けることが役立ちます。
- 「結婚して立ち直った」という話を聞いたら、変わり始めた後に結婚した可能性も考える。
- 裁判員として更生を考えるときは、仕事や家族などの支えと、本人の考え方の変化の両方に注目する。
- 身近な人がやり直そうとしているときは、過去で判断せず、変わろうとしている今の姿を認める言葉をかける。
05よくある質問
デシスタンスとは何ですか
犯罪を重ねていた人が、犯罪から離れていく過程のことです。犯罪が止まった時点ではなく、そこに至るまでの変化を指します。
結婚は犯罪を減らしますか
多くの研究で結婚後に犯罪が減る関連が見られます。ただし58研究を見直したレビューでは、結婚が原因だと示した研究はありませんでした。
本人の気持ちは関係ありますか
130人の財産犯の追跡研究では、出所前の本人の気持ちや考え方が、出所後の再犯に直接影響していました。
SOURCES
- Laub, J. H., & Sampson, R. J. (2001). Understanding Desistance from Crime. Crime and Justice, 28, 1-69. https://doi.org/10.1086/652208
- Skardhamar, T., Savolainen, J., Aase, K. N., & Lyngstad, T. H. (2015). Does Marriage Reduce Crime? Crime and Justice, 44(1), 385-446. https://doi.org/10.1086/681557
- LeBel, T. P., Burnett, R., Maruna, S., & Bushway, S. (2008). The 'Chicken and Egg' of Subjective and Social Factors in Desistance from Crime. European Journal of Criminology, 5(2), 131-159. https://doi.org/10.1177/1477370807087640


