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刑罰と更生仕事に就けば再犯は減るのか。無職の人の再犯は有職の2倍超、でも就労支援の比較試験は効果を示せなかった

「仕事さえあれば、人は犯罪から離れられる」。更生の議論でよく聞く考えです。統計を見ると、確かに仕事のある人ほど再犯は少なくなっています。では、仕事を用意すれば再犯は減るのでしょうか。研究の答えは、もう少し複雑です。
SUMMARY
- 令和7年版犯罪白書では、2024年に保護観察が終わった保護観察付全部執行猶予者の取消・再処分率は、有職18.3%、無職42.1%だった。無職のほうが一貫して高い。
- 米国の全国規模の就労実験を分析した研究では、27歳以上の人は仕事の機会を与えられると犯罪や逮捕の報告が少なかったが、10代〜20代前半では効果がほとんどなかった。
- 刑事司法に関わった6,000人超を対象にした8つのランダム化比較試験のレビューでは、就労を中心にした支援は再逮捕を減らしていなかった。
01どんな心の仕組みが働いているのか
仕事は収入だけでなく、毎日の居場所、人とのつながり、「失いたくないもの」をもたらし、犯罪から離れる支えになると考えられています。
犯罪学では、人生の流れを変える出来事を「転機」と呼びます。安定した仕事は、結婚と並ぶ代表的な転機とされてきました。働くことで生活のリズムができ、周りの人から信頼されるようになります。
ただし「仕事がある人は再犯が少ない」という事実は、仕事が原因とは限りません。もともと生活が安定し、立ち直る力のある人ほど仕事に就きやすい、という逆の説明も考えられます。
02研究でわかっていること
仕事と再犯の少なさには強い関連があります。しかし仕事を与える支援の効果は、年齢や仕事の質によって分かれ、一律に効くとは言えません。
Uggen(2000)[1]
犯罪歴のある人に仕事を割り当てた米国の全国規模の就労実験を分析した。27歳以上の人は、仕事の機会を与えられると、与えられない場合より犯罪や逮捕の報告が少なかった。10代や20代前半では、仕事の効果はほとんど見られなかった。研究者は、仕事は年齢が高い人にとって転機になると結論づけた。
対象: 米国の就労実験の参加者 / 限界: 犯罪は本人の申告による。数十年前の実験。
Visherら(2006)[2]
職業訓練や職業紹介の効果を調べたランダム化比較試験8件(6,000人超)をまとめた。就労中心の支援は、再逮捕の可能性を有意に減らしていなかった。研究者は、試験の数が少なく古いため、どんな支援が誰に効くかはまだ十分に調べられていないとしている。
対象: 16〜17歳と大人 / 限界: 支援の内容がばらばらで、多くが古い研究。
法務省(2025)[3]
令和7年版犯罪白書によると、保護観察が終わった人の取消・再処分率は、就労状況別に見ると一貫して無職のほうが高い。2024年は、仮釈放者で有職1.8%・無職7.8%、保護観察付全部執行猶予者で有職18.3%・無職42.1%だった。
対象: 2024年に保護観察が終わった人 / 限界: 関連を示す統計で、仕事が原因かどうかはわからない。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「仕事があれば立ち直れる」は半分正しく、半分は言いすぎです。関連は強いものの、仕事を与えるだけで再犯が減るという証拠はまだ限られています。
04日常で生かせる視点
仕事は大切な支えですが、それだけで十分とは限りません。「どんな人に、どんな仕事と支えがあるか」を見る視点が役立ちます。
- 「無職の人の再犯率が高い」という報道を見たら、それが原因なのか関連なのかを分けて考える。
- 裁判員として社会復帰を考えるときは、仕事の有無だけでなく、職場の支えや人間関係にも目を向ける。
- 身近に立ち直ろうとしている人がいたら、仕事を紹介するだけでなく、続けられるよう声をかけ続ける。
05よくある質問
仕事がある人は再犯しにくいのですか
日本の統計では、保護観察が終わった人の取消・再処分率は一貫して無職のほうが高く、2024年は有職18.3%、無職42.1%でした(保護観察付全部執行猶予者)。
就労支援は再犯を減らしますか
8つのランダム化比較試験をまとめたレビューでは、就労中心の支援は再逮捕を減らしていませんでした。支援の中身や対象によって結果が変わる可能性があります。
年齢によって違いはありますか
米国の就労実験の分析では、27歳以上で仕事の効果が見られ、若い人ではほとんど見られませんでした。
SOURCES
- Uggen, C. (2000). Work as a Turning Point in the Life Course of Criminals: A Duration Model of Age, Employment, and Recidivism. American Sociological Review, 65(4), 529-546. https://doi.org/10.1177/000312240006500403
- Visher, C. A., Winterfield, L., & Coggeshall, M. B. (2006). Systematic Review of Non-Custodial Employment Programs: Impact on Recidivism Rates of Ex-Offenders. Campbell Systematic Reviews, 2(1). https://doi.org/10.4073/csr.2006.1
- 法務省法務総合研究所 (2025). 令和7年版 犯罪白書 第5編第4章2 保護観察対象者の再処分等の状況. 法務省. https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/72/nfm/n72_2_5_4_0_2.html


