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取り調べと冤罪無実の人はなぜ「やりました」と言ってしまうのか。虚偽自白を生む取り調べの心理

「やっていないなら、自白するはずがない」。多くの人はそう考えます。しかし米国では、DNA鑑定で無実が証明された人の中に、取り調べで自白していた人が少なくありませんでした。無実の人がなぜ自白してしまうのか、心理学の研究から見ていきます。
SUMMARY
- 米国でDNA鑑定により無実が証明された200人以上の事件のうち、15〜20%で警察の取り調べによる虚偽自白が関わっていた。
- コンピューターを壊したと疑われる実験で、「キーを押すのを見た」という偽の目撃証言があると、自白書に署名する無実の学生は48%から94%に増えた。
- 不正を疑われる実験では、何の手法も使わないと無実の人の自白は6%だったが、「罪を軽く見せる言葉」と取引の提示を両方使うと43%に増えた。
01どんな心の仕組みが働いているのか
取り調べでは「否定しても無駄だ」という絶望感と「認めたほうが得だ」という見通しが組み合わさり、無実の人も目先の苦痛から逃れようとして自白することがあります。
米国の取り調べでは、容疑者の罪を前提に問い詰め、ときに存在しない証拠を示す手法が使われてきました。これを「最大化」と呼びます。逆に「誰でもやってしまうことだ」と罪を軽く見せる手法は「最小化」と呼ばれます。
無実の人は「本当のことはいずれわかる」と考え、黙秘権などの権利を手放しやすいことも指摘されています。若い人や知的障害のある人など、圧力の影響を受けやすい立場の人もいます。
02研究でわかっていること
偽の証拠や「罪を軽く見せる言葉」は、真犯人だけでなく無実の人の自白も増やします。その結果、自白が真実かどうかを見分けにくくなります。
Kassinら(2010)[1]
米国心理学会の部会が出した、警察の取り調べと自白についての総説(白書)。DNA鑑定で無実が判明した事件の15〜20%に虚偽自白が関わっていたとまとめた。危険を高める要因として、若さ、知的障害、長時間の取り調べ、偽の証拠の提示、最小化を挙げ、取り調べ全体の録画を強く勧めた。
対象: 実験・事例・実地調査の文献 / 限界: 虚偽自白の正確な発生率はわかっていない。
KassinとKiechel(1996)[2]
大学生に、押してはいけないキーを押してコンピューターを止めたと疑いをかけた。実際は全員無実で、最初は全員が否定した。その場にいた協力者が「押すのを見た」と偽の証言をすると、自白書に署名する人は48%から94%に増えた。自分がやったと思い込み、記憶にない細部まで語る人もいた。
対象: 大学生 / 限界: 罪が軽く、本当の取り調べほど重い結果はない。数値は2010年の白書の記述による。
Russanoら(2005)[3]
本当に不正をした人としていない人の両方を、不正を疑う場面に置いた。手法なしでは真犯人の46%、無実の人の6%が自白した。最小化では無実の人の自白が18%、取引の提示では14%、両方では43%に増えた。真犯人の自白も87%まで増えたが、自白が真実である見込みは下がった。
対象: 大学生 / 限界: 実験室の場面で、実際の刑事事件とは重さが違う。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「無実なら自白しない」は思い込みです。取り調べの手法しだいで、無実の人も自白することが実験と実際の事件の両方で示されています。
04日常で生かせる視点
自白があるかどうかだけでなく、その自白がどんな取り調べで生まれたのかに目を向けることが大切です。
- ニュースで「容疑者が自白」と聞いても、それだけで真犯人と決めつけない。
- 裁判員になったら、自白の内容が他の証拠と合っているか、取り調べの録画や記録はあるかに注目する。
- 身近な人を問い詰めるときも、決めつけて追い込むと、本当でない「ごめん」を引き出しやすいと知っておく。
05よくある質問
虚偽自白とは何ですか
実際にはやっていない罪を、やったと認めてしまうことです。圧力から逃れるための自白と、自分がやったと思い込んでしまう自白があります。
虚偽自白はどのくらい起きていますか
正確な発生率はわかっていません。ただ米国でDNA鑑定により無実が判明した事件の15〜20%に、虚偽自白が関わっていました。
防ぐ方法はありますか
2010年の白書は、取り調べ全体を録画することを強く勧めています。偽の証拠の提示や、罪を軽く見せる言葉の使用にも注意を促しています。
SOURCES
- Kassin, S. M., Drizin, S. A., Grisso, T., Gudjonsson, G. H., Leo, R. A., & Redlich, A. D. (2010). Police-induced confessions: Risk factors and recommendations. Law and Human Behavior, 34(1), 3-38. https://doi.org/10.1007/s10979-009-9188-6
- Kassin, S. M., & Kiechel, K. L. (1996). The Social Psychology of False Confessions: Compliance, Internalization, and Confabulation. Psychological Science, 7(3), 125-128. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.1996.tb00344.x
- Russano, M. B., Meissner, C. A., Narchet, F. M., & Kassin, S. M. (2005). Investigating True and False Confessions Within a Novel Experimental Paradigm. Psychological Science, 16(6), 481-486. https://doi.org/10.1111/j.0956-7976.2005.01560.x


