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取り調べと冤罪

10代の罪は大人と同じ責任なのか。考える力は16歳で大人並み、感情の中での自制は20代まで育つ「成熟のずれ」

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学校の廊下に並ぶロッカー
Photo: ChinaFlag / Public domain / Wikimedia Commons
AI RESEARCH公開された研究と公的統計をAIが調べて整理しました。実在の事件を興味本位で扱わず、犯罪の手口の詳細は書きません(出典は末尾)。

10代が罪を犯したとき、「まだ子どもだから」と考えるべきか、「大人と同じ責任を」と考えるべきか。心理学の研究は「成熟には少なくとも2種類あり、育つ時期が違う」と答えています。11か国5,227人を調べた研究では、筋道を立てて考える力は16歳ごろに大人並みになりました。一方、気持ちが高ぶる場面で自分を抑える力は、18歳を過ぎても伸び続けていました。

SUMMARY

  1. 11か国の10〜30歳5,227人の研究で、記憶や言葉を操る「考える力」は16歳ごろに大人並みになった。感情や刺激のある場面での自制は、18歳を過ぎても伸びていた。研究者はこれを「成熟のずれ」と呼ぶ。
  2. 同じ国際研究の分析では、刺激を求める気持ちは19歳ごろが頂点で、自分を律する力は23〜26歳で伸びが止まった。米国では、こうした発達の研究が少年の死刑や終身刑をめぐる最高裁の判断で参照された。
  3. ただし「アクセルが先に育ち、ブレーキが遅れる脳」という説明は単純化しすぎだという批判もある。脳の変化が実際の行動にどうつながるかの直接の証拠は弱く、同じ年齢でも個人差は大きい。

01 どんな心の仕組みが働いているのか少年の罪は、なぜ大人と分けて考えられる?

多くの国は18歳を区切りに、未成年と大人を法律で分けています。背景にあるのは、若い人は判断が未熟なぶん、同じ行いでも責任の重さが違うという考えです。

ところが「10代はどれくらい大人か」という問いに、心理学者は場面によって違う答えを出してきました[1]。

この「矛盾」に、発達心理学者のスタインバーグらは「矛盾ではない」と答えました。能力ごとに育つ時期が違うので、同じ年齢でも、ある面では大人並み、別の面ではまだ未熟ということがありうる、という考えです[1]。

研究者は2つの考え方を区別します。落ち着いて時間をかけて考える場面の思考は「冷たい認知」。感情が高ぶり、じっくり考えにくい場面の思考は「熱い認知」と呼ばれます。スタインバーグらは、感情が高ぶる場面で起きやすい行いについては、熱い認知の成熟を基準に年齢の区切りを考えるべきだと主張しています[1]。仲間がいるだけで10代の選択が変わる実験は若者は仲間がいると無茶をしやすいのかで紹介しています。

02 研究でわかっていること10代の「考える力」と「自制」は、何歳で大人並みになる?

考える力は16歳ごろに大人並みになり、その後はほとんど伸びません。一方、刺激や感情のある場面での自制は20代まで伸び続けます。この時期のずれは、文化の異なる多くの国で見られました。

16歳ごろ記憶・言葉を操る「考える力」が大人並みになった年齢(11か国5,227人の研究)
18歳以降感情や刺激のある場面での自制(心理社会的成熟)が大人並みになった年齢(同じ研究)
19歳刺激を求める気持ちが頂点になった年齢(同じ国際研究の分析)
23〜26歳自分を律する力の伸びが止まり、横ばいになった年齢(同じ国際研究の分析)

Icenogle, Steinberg ほか(2019)[1]

中国、コロンビア、インド、ケニア、スウェーデン、米国など11か国で、10〜30歳を調べた。数字を逆から言う課題などで測った「考える力」は、10歳から急に伸び、16歳ごろで横ばいになった。刺激を求める傾向、先のことを考える力、衝動を抑える力などをまとめた「心理社会的成熟」が大人並みになるのは、18歳を過ぎてからだった。

対象: 11か国の10〜30歳5,227人(女性50.7%) / 限界: ある時点で年齢の違う人を比べた研究で、同じ人の成長を追ってはいない。実際の行動や判断の力は測っていない。ヨルダンとケニアでは、自制の年齢差がはっきり見られなかった。

Steinberg, Icenogle ほか(2018)[2]

同じ11か国のデータで、「アクセル」にあたる刺激を求める気持ちと、「ブレーキ」にあたる自分を律する力を比べた。刺激を求める気持ちは10代後半にかけて高まり、19歳ごろが頂点で、その後は下がった。自分を律する力は少しずつ伸び、23〜26歳で横ばいになった。

対象: 11か国の10〜30歳の5,000人あまり / 限界: 刺激を求める気持ちが山の形を描いたのは11か国中7か国で、スウェーデンなどでは年齢による差が見られなかった。

Cohen, Steinberg, Casey ほか(2016)[3]

13〜25歳の110人に、合図に応じてボタンを押す・押さないを素早く判断する課題をしてもらい、脳の活動も測った。嫌な気分が高まった状態では、18〜21歳の成績が22歳以上の大人より下がった。落ち着いた状態では、18〜21歳は少し年上の人と同じくらいできていた。

対象: ニューヨークとロサンゼルスの地域住民110人 / 限界: 実験室の課題での結果で、人数も多くない。現実の場面にどこまで当てはまるかは別に確かめる必要がある。落ち着いた状態での結果は、Icenogleら(2019)の論文による要約[1]。

Cauffman & Steinberg(2000)[4]

12〜48歳の1,000人あまりに、反社会的な行動や危ない行動に誘われる架空の場面での判断を答えてもらった。責任感、先を見通す力、自分を抑える力が育っているほど、社会的に責任ある判断をしていた。平均では10代は大人より低かったが、同じ年齢の10代の中でも個人差はかなり大きかった。

対象: 12〜48歳の1,000人あまり / 限界: 架空の場面への回答で、実際の行動ではない。責任ある判断は、19歳を過ぎるとそれ以上はあまり増えなかった。

03 よくある思い込みと、研究が示す実際「10代の脳は未熟」で、少年の罪は説明できる?

それだけでは説明できません。脳の発達に年齢差があることは示されていますが、それが実際の行動にどうつながるかの直接の証拠は弱く、「アクセルとブレーキ」の説明は単純化だと研究者自身も認めています。

MYTH / 思い込み10代は判断力そのものが大人より劣っている。
FACT / 研究では落ち着いて考える場面の力は、16歳ごろには大人並みになっていた。差が残るのは、感情が高ぶる場面や刺激に誘われる場面での自制だった[1][3]。
MYTH / 思い込み脳科学で、10代の脳は「アクセルが強くブレーキが弱い」と証明された。
FACT / 研究ではこのモデルには、合わないデータもあると批判されている。脳の2つの系が違う育ち方をする証拠はあるが、それが現実の行動を左右するという直接の証拠は弱い[5]。モデルを唱える側も、単純化だと認めたうえで、考える道具として役に立つと反論している[6]。
MYTH / 思い込み18歳を境に、人は急に大人になる。
FACT / 研究では成熟は少しずつ進み、能力ごとに時期が違う。18〜21歳でも、嫌な気分が高まると自制の成績は下がった[3]。同じ年齢でも個人差は大きく、年齢だけで一人ひとりの成熟は決まらない[4]。

研究者のあいだでも、科学が法律にどう使われるかには慎重な意見があります。脳の発達についてわかりやすい比喩が広まると、まだよくわかっていないことまで「わかった」ように見えてしまうからです[5]。10代に非行が増え、大人になると減る年齢の曲線はなぜ非行は10代でピークを迎えるのかで、自制と犯罪の関係は「我慢できない人」が罪を犯すのかで紹介しています。

04 日常で生かせる視点少年事件のニュースを見るとき、何を考えればいい?

発達の研究は、責任の「有無」ではなく「どんな場面で判断したか」を考える手がかりになります。年齢だけで決めつけず、研究がわかっていることと、価値の問題を分けて考えることが役に立ちます。

裁判員として若い人の事件を考える場面では、刑罰がその後の人生にどう影響するかも判断材料になります。刑務所に入ると再犯は減るのかも参考になります。

05よくある質問

10代の脳は何歳で大人と同じになるのですか?

能力によって違います。11か国5,227人の研究では、記憶や言葉を操る考える力は16歳ごろに大人並みになりました。一方、感情や刺激のある場面での自制は18歳を過ぎても伸び、自分を律する力は23〜26歳ごろに横ばいになったという分析もあります。

脳が未熟なら、少年の罪は軽くするべきなのですか?

研究だけでは決められません。研究が示すのは、10代は平均すると、感情が高ぶる場面での自制が大人より弱いという傾向です。それを責任の重さにどう反映するかは、社会が決める価値の問題です。米国では、こうした研究が少年の死刑や終身刑をめぐる最高裁の判断で参照されました。

「アクセルとブレーキ」の説明は正しいのですか?

大まかな傾向としては支持するデータがありますが、単純化だという批判もあります。脳の部位の発達の違いが、現実の行動にどうつながるかの直接の証拠は弱いと指摘されています。モデルを唱える研究者自身も単純化を認め、考えるための道具として役に立つと述べています。

18〜21歳の若者も、10代と同じように考えられますか?

一部の場面ではそうです。13〜25歳の110人を調べた研究では、落ち着いた状態の18〜21歳は少し年上の人と同じくらい自制の課題ができました。しかし嫌な気分が高まった状態では、22歳以上の大人より成績が下がりました。

SOURCES

  1. Icenogle, G., Steinberg, L., Duell, N., Chein, J., Chang, L., Chaudhary, N., et al. (2019). Adolescents' cognitive capacity reaches adult levels prior to their psychosocial maturity: Evidence for a "maturity gap" in a multinational, cross-sectional sample. Law and Human Behavior, 43(1), 69-85. https://doi.org/10.1037/lhb0000315
  2. Steinberg, L., Icenogle, G., Shulman, E. P., Breiner, K., Chein, J., Bacchini, D., et al. (2018). Around the world, adolescence is a time of heightened sensation seeking and immature self-regulation. Developmental Science, 21(2), e12532. https://doi.org/10.1111/desc.12532
  3. Cohen, A. O., Breiner, K., Steinberg, L., Bonnie, R. J., Scott, E. S., Taylor-Thompson, K. A., et al. (2016). When is an adolescent an adult? Assessing cognitive control in emotional and nonemotional contexts. Psychological Science, 27(4), 549-562. https://doi.org/10.1177/0956797615627625
  4. Cauffman, E., & Steinberg, L. (2000). (Im)maturity of judgment in adolescence: Why adolescents may be less culpable than adults. Behavioral Sciences & the Law, 18(6), 741-760. https://doi.org/10.1002/bsl.416
  5. Pfeifer, J. H., & Allen, N. B. (2012). Arrested development? Reconsidering dual-systems models of brain function in adolescence and disorders. Trends in Cognitive Sciences, 16(6), 322-329. https://doi.org/10.1016/j.tics.2012.04.011
  6. Shulman, E. P., Smith, A. R., Silva, K., Icenogle, G., Duell, N., Chein, J., & Steinberg, L. (2016). The dual systems model: Review, reappraisal, and reaffirmation. Developmental Cognitive Neuroscience, 17, 103-117. https://doi.org/10.1016/j.dcn.2015.12.010