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集団と同調「38人の目撃者は誰も助けなかった」は本当か。傍観者効果の再検証と、防犯カメラが映した9割の手助け

「周りに人が多いほど、人は助けなくなる」。心理学の教科書でおなじみの傍観者効果は、ある殺人事件で「38人の目撃者が誰も助けなかった」という話とともに広まりました。ところが近年、その話そのものに裏付けがなかったこと、そして現実の場面では多くの人が助けに入っていることがわかってきました。
SUMMARY
- 「38人の目撃者が誰も助けなかった」という話は、記録を調べ直すと、38人がいたこと、殺害を見ていたこと、何もしなかったことのいずれも裏付けがなかった。
- 実験室の研究をまとめたメタ分析では、他の人がいると一人ひとりが助ける確率は下がる。ただし危険がはっきりした場面では、この効果は弱まった。
- 英国・オランダ・南アフリカの防犯カメラ映像219件では、10件中9件の争いで少なくとも1人が助けに入り、周りの人が多いほど助けが入りやすかった。
01どんな心の仕組みが働いているのか
人は周りに他の人がいると「誰かがやるだろう」と責任を分け合い、一人のときより動きにくくなります。これが傍観者効果です。
傍観者効果の研究は、1960年代から数多く行われてきました。他の人がいると、緊急事態だと気づくのが遅れたり、自分が動く責任を感じにくくなったりすると考えられています。
この研究が広く知られるきっかけになったのが、米国で女性が殺害された事件をめぐる「38人の目撃者が誰も助けなかった」という話でした。この話は、集団の中の人間の冷たさを示すたとえとして、多くの教科書に載りました。
02研究でわかっていること
一人ひとりの「助ける確率」は人がいると下がりますが、「誰かが助ける確率」は高いことがわかっています。
Manningら(2007)[1]
「38人の目撃者」の話を当時の記録から調べ直した。38人の目撃者がいたこと、目撃者が殺害を見ていたこと、目撃者が何もしなかったことは、どれも記録では裏付けられなかった。研究者は、この話が教科書で語り継がれるうちに、人助けの研究の幅を狭めてきたと指摘している。
対象: 事件の記録資料 / 限界: 歴史資料の分析で、実験ではない。
Fischerら(2011)[2]
1960年代から2010年までの傍観者研究をまとめたメタ分析(7,700人超、105の効果量)。他の人がいると助ける行動は減っていた。ただし、危険がはっきりした場面や、加害者がその場にいる場面では、傍観者効果は弱まった。
対象: 実験室・実地の研究 / 限界: 多くは実験の場面で、現実の緊急事態とは異なる。
Philpotら(2020)[3]
英国・オランダ・南アフリカの街中の防犯カメラが映した実際の争い219件を分析した。10件中9件で、少なくとも1人、多くの場合は複数の人が助けに入った。治安の感じ方が大きく違う3か国で、助けに入る割合は似ていた。周りの人が多いほど、誰かが助けに入りやすかった。
対象: 3か国の219件の映像 / 限界: 映像に残った争いに限られる。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「人が多いと誰も助けない」は言いすぎです。一人ひとりは動きにくくなっても、誰かは助けに入ることが多いのです。
04日常で生かせる視点
傍観者効果を知っていることが、自分が最初の一人になる後押しになります。
- 「誰かがやるだろう」と思ったら、それが傍観者効果のサインと気づく。
- 助けを求めるときは「そこの青い服の方、救急車を呼んでください」と、相手を指名すると動いてもらいやすい。
- 危険な場面では自分で止めに入らず、110番や周りの人への声かけなど、安全にできることを選ぶ。
05よくある質問
傍観者効果とは何ですか
周りに他の人がいると、一人のときより助ける行動が減る傾向のことです。「誰かがやるだろう」と責任を分け合ってしまうことが一因とされます。
「38人の目撃者」の話は本当ですか
2007年の研究で当時の記録を調べ直したところ、38人がいたこと、殺害を見ていたこと、何もしなかったことは、いずれも裏付けられませんでした。
実際の場面では、人は助けてくれますか
3か国の防犯カメラ映像219件の研究では、10件中9件の争いで少なくとも1人が助けに入っていました。
SOURCES
- Manning, R., Levine, M., & Collins, A. (2007). The Kitty Genovese murder and the social psychology of helping: The parable of the 38 witnesses. American Psychologist, 62(6), 555-562. https://doi.org/10.1037/0003-066X.62.6.555
- Fischer, P., Krueger, J. I., Greitemeyer, T., et al. (2011). The bystander-effect: a meta-analytic review on bystander intervention in dangerous and non-dangerous emergencies. Psychological Bulletin, 137(4), 517-537. https://doi.org/10.1037/a0023304
- Philpot, R., Liebst, L. S., Levine, M., Bernasco, W., & Lindegaard, M. R. (2020). Would I be helped? Cross-national CCTV footage shows that intervention is the norm in public conflicts. American Psychologist, 75(1), 66-75. https://doi.org/10.1037/amp0000469


