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記憶と目撃証言

体験していない出来事を「思い出す」ことはあるのか。「迷子の記憶」実験と、その再検証

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Interior of the Ruoholahti shopping centre in Ruoholahti, Helsinki, Finland empty of people on an evening in September 2022.
Photo: JIP / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AI RESEARCH公開された研究と公的統計をAIが調べて整理しました。実在の事件を興味本位で扱わず、犯罪の手口の詳細は書きません(出典は末尾)。

子どもの頃にショッピングモールで迷子になった。そんな体験をしていないのに、話を聞かされるうちに「思い出して」しまうことはあるのでしょうか。1995年に発表された「迷子の記憶」実験は、偽りの記憶の研究を大きく広げました。その後の再現と見直しから、どこまで言えるのかを見ていきます。

SUMMARY

  1. 1995年の「迷子の記憶」実験を5倍の人数(123人)で再現した2023年の研究では、35%が迷子になった偽りの記憶を語った。元の研究では25%だった。
  2. 偽りの記憶を植えつける8つの研究(423人)の記録を同じ基準で採点し直した2017年の分析では、30.4%が偽りの記憶、さらに23%が出来事をある程度受け入れたと判定された。
  3. 一方、2017年の系統的レビューでは、何らかの「思い出す感覚」が生じたのは平均47%だが、本人も完全な記憶と評価しそうなのは15%にとどまった。

01どんな心の仕組みが働いているのか

記憶は、実際の体験だけでなく、人から聞いた話や頭の中で思い描いた場面からも作られます。思い描いた場面が、いつのまにか「体験した記憶」として感じられることがあります。

「迷子の記憶」実験では、参加者の家族から子どもの頃の本当の出来事を聞き取り、そこに作り話をひとつ混ぜて参加者に示しました。参加者は、それぞれの出来事について思い出せることを話します。

この手法は、人の記憶に出来事をまるごと植えつけられるかを調べるものです。何度も思い出そうとするうちに、作り話の場面に細部や感情が加わっていくことがあります。

02研究でわかっていること

作り話を聞かされると、3割ほどの人が偽りの記憶を語ることは、再現研究でも確かめられています。ただし、どこからを「記憶」と呼ぶかで割合は大きく変わります。

35%迷子になった偽りの記憶を語った人(2023年の再現研究・123人)
30.4%偽りの記憶と判定された人(8研究・423人の再分析・2017年)
15%本人も完全な記憶と評価しそうな人(系統的レビュー・2017年)

Murphyら(2023)[1]

1995年の「迷子の記憶」実験を、事前に分析計画を登録したうえで、元の5倍の123人で再現した。年上の家族から聞いた本当の出来事と作り話について、アンケートと2回の面接で話してもらった。35%が子どもの頃に迷子になった偽りの記憶を語ったと判定された(元の研究では25%)。模擬陪審員の多くも、作り話の出来事が本当にあったと信じた。

対象: 123人の参加者 / 限界: 植えつけた出来事は迷子の1種類のみ。

Scoboriaら(2017)[2]

偽りの記憶を植えつける8つの研究(423人)の面接記録を、7つの基準で採点し直した(メガ分析)。30.4%が偽りの記憶、さらに23%が出来事をある程度受け入れたと判定された。自分に関係する情報を使い、想像させる手順があり、写真を使わない条件では、偽りの記憶の割合は46.1%だった。

対象: 8研究の参加者423人 / 限界: 研究者が記録を採点したもので、本人の感じ方とは一致しない場合がある。

BrewinとAndrews(2017)[3]

子どもの頃の偽りの出来事を大人に植えつける3種類の研究を見直した系統的レビュー。想像させる方法や偽りの結果を伝える方法では、出来事があったと信じる度合いは少し上がるだけだった。植えつけ研究では、何らかの思い出す感覚が平均47%に生じたが、完全な記憶と評価されそうなのは15%だった。偽りの記憶へのかかりやすさは、言われてきたより限られるとしている。

対象: 3種類の研究方法の文献 / 限界: 何を「記憶」と数えるかの定義に左右される。

03よくある思い込みと、研究が示す実際

「人の記憶は簡単に作り変えられる」も、「偽りの記憶はめったに起きない」も言いすぎです。起きることは確かですが、その割合は数え方で変わります。

MYTH / 思い込み体験していないことを思い出すなど、ありえない。
FACT / 研究では作り話を聞かされた人の3割ほどが偽りの記憶を語りました。2023年の再現研究でも35%でした。
MYTH / 思い込み誰でも簡単に偽りの記憶を植えつけられる。
FACT / 研究では本人も完全な記憶と評価しそうなのは15%ほどという見直しがあり、多くの人は受け入れきりません。
MYTH / 思い込み細かく感情を込めて語られる記憶は、本物の体験だ。
FACT / 研究では模擬陪審員の多くは、作り話の出来事も本当にあったと信じました。語りの詳しさだけでは見分けられません。

04日常で生かせる視点

記憶の詳しさや本人の確信だけでは、本当に体験したことかどうかは判断できない、と知っておくことが大切です。

05よくある質問

偽りの記憶とは何ですか

実際には体験していない出来事を、体験したこととして思い出してしまう記憶のことです。人から聞いた話や、思い描いた場面がもとになります。

「迷子の記憶」実験は再現されましたか

2023年に123人で再現され、35%が迷子になった偽りの記憶を語りました。1995年の元の研究では25%でした。

偽りの記憶はどのくらいの人に起きますか

8研究を再分析した2017年の研究では30.4%でした。ただし、本人も完全な記憶と評価しそうなのは15%ほどという見直しもあります。

SOURCES

  1. Murphy, G., Dawson, C. A., Huston, C., Ballantyne, L., Barrett, E., Cowman, C. S., Fitzsimons, C., Maher, J., Ryan, K. M., & Greene, C. M. (2023). Lost in the mall again: a preregistered replication and extension of Loftus & Pickrell (1995). Memory, 1-13. https://doi.org/10.1080/09658211.2023.2198263
  2. Scoboria, A., Wade, K. A., Lindsay, D. S., Azad, T., Strange, D., Ost, J., & Hyman, I. E. (2017). A mega-analysis of memory reports from eight peer-reviewed false memory implantation studies. Memory, 25(2), 146-163. https://doi.org/10.1080/09658211.2016.1260747
  3. Brewin, C. R., & Andrews, B. (2017). Creating memories for false autobiographical events in childhood: A systematic review. Applied Cognitive Psychology, 31(1), 2-23. https://doi.org/10.1002/acp.3220