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パーソナリティと犯罪「精神疾患の人は危ない」は本当か。暴力犯罪の約95%は重い精神疾患のない人によるものだった

大きな事件が起きると、「犯人に精神科の通院歴があった」という話がよく注目されます。では、精神疾患のある人は本当に暴力をふるいやすいのでしょうか。研究からは、世間のイメージとはかなり違う姿が見えてきます。
SUMMARY
- スウェーデンの全国登録データでは、暴力犯罪のうち重い精神疾患の人によるものは5.2%で、約20件に1件だった。
- 統合失調症などと暴力の関係をまとめたメタ分析では、薬物などの乱用がない場合のオッズ比は2.1、乱用が重なる場合は8.9で、上乗せの多くは乱用と重なっていた。
- 精神疾患のある成人4,480人の調査では、暴力をふるった人は23.9%、暴力の被害にあった人は30.9%で、被害のほうが多かった。
01どんな心の仕組みが働いているのか
「精神疾患=危険」というイメージは、まれな事件の報道と、わかりやすい説明を求める心が合わさって生まれやすいものです。
人は、目立つ出来事ほど「よくあること」と感じやすいと考えられています。精神疾患と結びついた事件は大きく報じられやすく、そのぶん印象に残ります。
一方で、研究では、精神疾患と暴力の関連の多くが、お酒や薬物などの乱用と重なっていることがわかっています。精神疾患だけを取り出して原因とみなすと、こうした他の要因が見えなくなってしまいます。
02研究でわかっていること
重い精神疾患と暴力には統計上の関連はありますが、その多くは薬物などの乱用と重なっていました。社会全体の暴力に占める割合は小さいです。
Fazelら(2009)[1]
統合失調症などの精神病と暴力の関係を調べた20の研究(18,423人)をまとめた。精神疾患のない人と比べた暴力のオッズ比(起こりやすさの比)は、薬物などの乱用がない場合は2.1、乱用が重なる場合は8.9だった。研究者は、リスクの上乗せの多くは乱用と重なっていると結論づけている。
対象: 20の研究、18,423人 / 限界: 研究によって結果のばらつきが大きい。
Fazelら(2006)[2]
スウェーデンの全国登録データで、統合失調症などで入院した98,082人を犯罪記録とつないだ。13年間で人口1,000人あたり45件の暴力犯罪があり、そのうち重い精神疾患の人によるものは2.4件だった。割合にすると5.2%で、約20件に1件にあたる。
対象: スウェーデンの全国データ / 限界: 入院歴のある人に限られ、有罪判決の記録にもとづく。
Desmaraisら(2014)[3]
米国の5つの研究に参加した精神疾患のある成人4,480人を調べた。6か月の間に暴力をふるった人は23.9%、暴力の被害にあった人は30.9%だった。研究者は、精神疾患のある人は加害者よりも被害者になりやすいと述べている。
対象: 米国の成人4,480人 / 限界: 本人の回答にもとづく。治療を受けている人が中心。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「精神疾患の人が事件を起こしやすい」は、関わる要因の多さと、被害者になりやすさを見落とした考え方です。
04日常で生かせる視点
事件の報道で通院歴が強調されたときこそ、「他にどんな要因があったか」を考えることが大切です。
- ニュースで「通院歴」が出てきたら、それだけで原因と決めつけず、他の要因の情報を待つ。
- 裁判員として判断するときは、診断名ではなく、その人の具体的な状況や証拠にもとづいて考える。
- 身近に精神疾患のある人がいたら、「危ない人」ではなく、被害にあいやすい立場でもあると知っておく。
05よくある質問
精神疾患のある人は暴力をふるいやすいのですか
重い精神疾患と暴力には統計上の関連があります。ただ、その多くは薬物などの乱用と重なっており、社会全体の暴力に占める割合は約5%でした。
なぜ精神疾患と事件が結びつけられやすいのですか
まれな事件ほど大きく報じられ、印象に残りやすいからです。研究では、関連の多くが薬物などの乱用と重なっていました。
精神疾患のある人は犯罪の被害にもあいやすいのですか
米国の4,480人の調査では、6か月で暴力の被害にあった人は30.9%で、暴力をふるった人の23.9%より多くなっていました。
SOURCES
- Fazel, S., Gulati, G., Linsell, L., Geddes, J. R., & Grann, M. (2009). Schizophrenia and Violence: Systematic Review and Meta-Analysis. PLoS Medicine, 6(8), e1000120. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1000120
- Fazel, S., & Grann, M. (2006). The Population Impact of Severe Mental Illness on Violent Crime. American Journal of Psychiatry, 163(8), 1397-1403. https://doi.org/10.1176/appi.ajp.163.8.1397
- Desmarais, S. L., Van Dorn, R. A., Johnson, K. L., Grimm, K. J., Douglas, K. S., & Swartz, M. S. (2014). Community Violence Perpetration and Victimization Among Adults With Mental Illnesses. American Journal of Public Health, 104(12), 2342-2349. https://doi.org/10.2105/AJPH.2013.301680


