Case file

パーソナリティと犯罪

「成功したサイコパス」は経営者に多いのか。92サンプルのメタ分析が示したリーダーとの弱い関係

約3分で読めます

Post Tower, Bonn, North Rhine-Westphalia, GermanyThe Post Tower is the tallest building in Bonn and a landmark of the modern federal distric
Photo: Dietmar Rabich / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AI RESEARCH公開された研究と公的統計をAIが調べて整理しました。実在の事件を興味本位で扱わず、犯罪の手口の詳細は書きません(出典は末尾)。

「成功する経営者にはサイコパスが多い」。ビジネス書や雑誌でよく見かける話です。冷静で大胆な人が出世する、というイメージは本当なのでしょうか。リーダーとサイコパス傾向の関係を調べた研究をまとめて見ていきます。

SUMMARY

  1. 92の独立したサンプルをまとめた2019年のメタ分析では、サイコパス傾向とリーダーに選ばれやすさの間には弱い正の相関しかなかった。
  2. 同じメタ分析で、サイコパス傾向はリーダーとしての成果とは弱い負の関係、部下を励まし成長させるリーダーシップとは中程度の負の関係だった。
  3. 管理職研修に選ばれた203人の調査では、サイコパス傾向は「カリスマ性・見せ方」の評価とは正、「責任感・成果」の評価とは負の関係だった。

01どんな心の仕組みが働いているのか

サイコパス傾向にふくまれる大胆さや自信に満ちた話し方は、第一印象で「リーダーらしい」と見られやすいと考えられています。

サイコパス傾向とは、冷淡さや人を操る傾向、衝動性などの性格の特徴を、程度の差として測ったものです。臨床で診断するサイコパスとは違い、多くの研究は一般の働く人を対象に、この傾向の強さを質問紙などで測っています。

大胆で物おじしない態度は、面接や会議で目立ち、評価されやすいことがあります。一方で、冷淡さや責任感の弱さは、長く一緒に働くうちにチームの成果を下げるかもしれません。研究は、この「見え方」と「実際の成果」を分けて調べてきました。

02研究でわかっていること

サイコパス傾向はリーダーに選ばれることと少しだけ関係しますが、リーダーとしての成果とはむしろ逆の関係でした。

92サイコパス傾向とリーダーシップのメタ分析に含まれた独立サンプル数(2019年)
203人サイコパス傾向と社内評価を調べた管理職候補の人数(2010年)
12.9%組織で働く人のサンプルでのサイコパスの推定割合(3サンプル、幅3.2〜24.7%、2021年)

Landayら(2019)[1]

92の独立したサンプルをまとめたメタ分析。サイコパス傾向とリーダーに選ばれやすさには弱い正の相関、リーダーとしての成果には弱い負の関係、部下の意欲を引き出し成長させるリーダーシップ(変革型リーダーシップ)とは中程度の負の相関があった。男性と女性で関係の形が違い、著者らは「リーダーのサイコパス傾向への心配は大げさかもしれない」と述べている。

対象: 働く人などの92サンプル / 限界: 多くは質問紙で測ったサイコパス傾向で、臨床的な評価ではない。

Babiakら(2010)[2]

会社から管理職研修に選ばれた203人を、専門家向けの評価法で調べた。サイコパス傾向の割合は、地域の一般の人のサンプルより高かった。サイコパス傾向は、社内の「カリスマ性・見せ方」の評価とは正の関係だったが、「責任感・成果」(チームワーク、管理能力、全体の実績)の評価とは負の関係だった。

対象: 米国の企業の管理職候補 / 限界: 協力した企業のサンプルに限られる。

Sanz-Garcíaら(2021)[3]

一般の大人のサイコパスの割合をまとめたメタ分析。組織で働く人のサンプルでは12.9%と、地域住民(1.9%)より高かった。ただし組織のサンプルは3つだけで、推定の幅は3.2%から24.7%と大きかった。

対象: 一般の大人16サンプル / 限界: 組織のサンプルが少なく、測り方もばらばら。

03よくある思い込みと、研究が示す実際

「出世する人ほどサイコパス」は言いすぎです。目立ちやすさとは少し関係しても、良いリーダーであることとは結びついていません。

MYTH / 思い込み成功した経営者には、サイコパスが多い。
FACT / 研究では92サンプルのメタ分析では、リーダーに選ばれやすさとの関係は弱いものでした。組織のサンプルで割合が高い結果もありますが、サンプルが少なく幅が大きいです。
MYTH / 思い込みサイコパス傾向は、ビジネスでは強みになる。
FACT / 研究ではリーダーとしての成果とは弱い負の関係、部下を育てるリーダーシップとは中程度の負の関係でした。
MYTH / 思い込みカリスマのある上司は、仕事もできる。
FACT / 研究では管理職候補の調査では、サイコパス傾向はカリスマ性の評価を上げる一方、責任感や成果の評価を下げていました。

04日常で生かせる視点

リーダーを見るときは、第一印象の「頼もしさ」と、実際の行動や成果を分けて考えることが役立ちます。

05よくある質問

「成功したサイコパス」とは何ですか

刑務所の外で、社会の中で働き暮らしているサイコパス傾向の強い人を指す言葉です。企業の協力を得にくいため、職場での実態を調べた研究は限られています。

サイコパス傾向の強い人はリーダーになりやすいですか

92サンプルのメタ分析では、リーダーに選ばれやすさとの関係は弱い正の相関にとどまりました。

サイコパス傾向の強いリーダーは成果を上げますか

同じメタ分析では、リーダーとしての成果とは弱い負の関係でした。部下を励まし育てるタイプのリーダーシップとは、中程度の負の関係でした。

SOURCES

  1. Landay, K., Harms, P. D., & Credé, M. (2019). Shall we serve the dark lords? A meta-analytic review of psychopathy and leadership. Journal of Applied Psychology, 104(1), 183-196. https://doi.org/10.1037/apl0000357
  2. Babiak, P., Neumann, C. S., & Hare, R. D. (2010). Corporate psychopathy: Talking the walk. Behavioral Sciences & the Law, 28(2), 174-193. https://doi.org/10.1002/bsl.925
  3. Sanz-García, A., Gesteira, C., Sanz, J., & García-Vera, M. P. (2021). Prevalence of Psychopathy in the General Adult Population: A Systematic Review and Meta-Analysis. Frontiers in Psychology, 12, 661044. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.661044