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刑罰と更生

罰を重くすれば犯罪は減るのか。抑止力の研究が示す「重さ」より「捕まる確かさ」

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Harris County Courthouse — in Houston, Harris County, Texas.
This site has served as the courthouse square for Harris (Originally Harrisburg
Photo: i_am_jim / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AI RESEARCH公開された研究と公的統計をAIが調べて整理しました。実在の事件を興味本位で扱わず、犯罪の手口の詳細は書きません(出典は末尾)。

凶悪な事件が報じられると「もっと刑を重くすべきだ」という声が上がります。罰が重ければ、人は犯罪を思いとどまるはずだ、という考えです。では、研究はこの考えをどこまで支えているのでしょうか。犯罪を思いとどまらせる力、「抑止」の研究を見ていきます。

SUMMARY

  1. 抑止の研究をまとめた2013年のレビューは、刑の重さより、罰を受ける確かさの効果の証拠がはるかに一貫していると結論した。特に効くのは「捕まる確かさ」だった。
  2. 経済学の研究をまとめた2017年のレビューでも、犯罪が警察の数などに反応する証拠は多い一方、刑の重さに反応する証拠はずっと少なかった。
  3. 犯罪の多い狭い場所に警察を集中させる取り組みの検証78件のうち62件で、犯罪や迷惑行為の目立った減少が報告された(65研究のメタ分析)。

01どんな心の仕組みが働いているのか

人が罰を気にするとき、遠い将来の刑の重さより「今ここで捕まりそうか」のほうが判断に響きやすいと考えられています。

抑止とは、罰を受けるおそれによって犯罪を思いとどまらせることです。抑止には、罰の「重さ」と、罰を受ける「確かさ」、つまり捕まる見込みの二つの面があります。

犯罪に及ぶ人の多くは、捕まらないと思っているときに行動します。捕まらないと思えば、刑がどれほど重くても判断には響きにくくなります。そのため、刑を重くすることより、捕まる見込みを高めることのほうが効くのではないか、と研究者は考えてきました。

02研究でわかっていること

刑を重くする効果の証拠は少なく、捕まる確かさを高める効果の証拠のほうが一貫しています。ただし、重さの効果がゼロと証明されたわけではありません。

62/78犯罪の多い場所への警察の集中で、犯罪の減少が報告された検証の数(2019年のレビュー)
65件そのメタ分析にまとめられた研究の数(うち27件はランダム化実験)

Nagin(2013)[1]

抑止の研究を広くまとめたレビュー。罰の確かさの効果の証拠は、重さの効果の証拠よりはるかに一貫していた。ただし確かさの証拠は、ほぼ「捕まる確率」に関するものだった。そのため、長い刑期や、刑の下限を法律で決める仕組みは、抑止の理由だけでは正当化できないと述べている。

対象: 抑止に関する既存研究 / 限界: レビューで、効果の大きさを一つの数字では示していない。

ChalfinとMcCrary(2017)[2]

過去20年ほどの経済学の研究を中心に、警察・刑罰・仕事と犯罪の関係をまとめたレビュー。抑止の証拠はまちまちだった。犯罪が警察や、まともな仕事の機会に反応する証拠は多かった。一方、刑の重さに反応する証拠はずっと少なかった。

対象: 過去20年ほどの経済学の研究 / 限界: 国や時代による違いは大きい。

Bragaら(2019)[3]

犯罪の多い狭い場所(ホットスポット)に警察を集中させる取り組みの研究65件(78の検証、うち27研究がランダム化実験)をまとめた。78の検証のうち62で、犯罪や迷惑行為の目立った減少が報告された。全体の効果は小さいものの、統計的に意味のある大きさだった。周りの地域へ犯罪が移るより、周りでも減る傾向が見られた。

対象: 警察による場所に絞った取り組み / 限界: 効果は小さく、ランダム化実験ではさらに小さかった。

03よくある思い込みと、研究が示す実際

「刑を重くすれば犯罪は減る」は、研究の裏付けが弱い考えです。効果がより確かなのは、捕まる見込みを高めることです。

MYTH / 思い込み刑を重くすれば、犯罪は大きく減る。
FACT / 研究ではレビューでは、刑の重さに犯罪が反応する証拠は少ないとされています。
MYTH / 思い込み犯罪をする人は、刑の重さを計算して決めている。
FACT / 研究では判断に響きやすいのは、刑の重さより「捕まりそうか」という見込みだと考えられています。
MYTH / 思い込み警察が見回りを増やしても、犯罪は別の場所に移るだけだ。
FACT / 研究では場所に絞った取り組みの研究では、周りの地域でも犯罪が減る傾向が見られました。

04日常で生かせる視点

厳罰化のニュースを見るときは「それで捕まる見込みは変わるのか」と問い直すと、効果を考えやすくなります。

05よくある質問

抑止とは何ですか

罰を受けるおそれによって、人に犯罪を思いとどまらせる働きのことです。罰の「重さ」と「確かさ」の二つの面があります。

刑を重くすると犯罪は減りますか

研究のレビューでは、刑の重さに犯罪が反応する証拠は少ないとされています。捕まる確かさを高めるほうが、効果の証拠は一貫しています。

では、刑を重くする意味はないのですか

抑止の効果が小さいというだけで、刑罰には責任に見合った罰を与えるなど別の目的もあります。重さの効果がゼロと証明されたわけでもありません。

SOURCES

  1. Nagin, D. S. (2013). Deterrence in the Twenty-First Century. Crime and Justice, 42(1), 199-263. https://doi.org/10.1086/670398
  2. Chalfin, A., & McCrary, J. (2017). Criminal Deterrence: A Review of the Literature. Journal of Economic Literature, 55(1), 5-48. https://doi.org/10.1257/jel.20141147
  3. Braga, A. A., Turchan, B., Papachristos, A. V., & Hureau, D. M. (2019). Hot spots policing of small geographic areas effects on crime. Campbell Systematic Reviews: Better Evidence for a Better World, 15(3). https://doi.org/10.1002/cl2.1046