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記憶と目撃証言面割りは「一度に見せる」か「一人ずつ見せる」か。見せ方で目撃者の犯人選びはどう変わるのか

目撃者が警察で何人かの写真や人物を見て、犯人を選ぶ手続きを「面割り(ラインナップ)」と呼びます。全員を一度に並べて見せるのと、一人ずつ順番に見せるのとでは、結果は変わるのでしょうか。長く「一人ずつが安全」と言われてきましたが、その考えも見直されています。
SUMMARY
- 72の実験(1万3,143人)をまとめたメタ分析では、一人ずつ見せる方式は、犯人がいない面割りでの誤りが一度に見せる方式より22%少なかった。
- 同じ分析で、犯人がいる面割りで正しく選ぶ率は一度に見せる方式の方が高く、その差は平均8%(条件をそろえた27の実験)だった。
- 2020年に専門家6人がまとめた面割りの推奨9項目は、二重盲検(実施者も誰が容疑者か知らない)や確信度の記録を求めている。
01どんな心の仕組みが働いているのか
人は、並んだ顔を比べて「この中で一番似ている人」を選びがちです。見せ方を変えると、この比べ方そのものが変わります。
一度に見せる方式(同時提示)では、目撃者は顔どうしを比べられます。犯人がいれば見つけやすい一方、犯人がいなくても「一番似た人」を選んでしまうおそれがあります。
一人ずつ見せる方式(継時提示)は、一人ごとに「この人か、違うか」を決めます。比べる相手がいない分、慎重になります。ただし、そのぶん本当の犯人を選び損ねることもあります。
02研究でわかっていること
一人ずつ見せると誤りは減りますが、正しい選択も減ります。どちらが「見分ける力」で上かは、分析方法で結論が分かれています。
Steblayら(2011)[1]
23の研究室による72の実験、1万3,143人をまとめたメタ分析。一人ずつ見せる方式は容疑者を選ぶこと自体が少ないが、選んだときは犯人である見込みが高かった。犯人がいない面割りでの誤りは22%少なかった。犯人がいる面割りで正しく選ぶ率の差は、条件をそろえた27の実験で平均8%と、2001年の分析の15%より小さかった。
対象: 模擬犯罪の実験 / 限界: 実際の事件の目撃者ではない。
Mickesら(2012)[2]
医療の検査の良し悪しを測る方法(ROC分析)を面割りに当てはめ、3つの実験を行った。その結果、犯人がいるかいないかを見分ける力では、一人ずつ見せる方式の方が一度に見せる方式より劣っているようだった。研究者は、それまでの比べ方では、どちらが優れた手続きかを判断できないと指摘した。
対象: 実験参加者 / 限界: 実験室の研究で、分析方法そのものにも議論がある。
Wellsら(2020)[3]
米国の心理学と法の学会が、1998年の指針を更新した。6人の研究者が9つの推奨をまとめた。4つは1998年からの引き継ぎで、似た人の選び方、事前の説明、二重盲検、確信度の記録。新たな5つは、事前の聞き取り、根拠のある疑いがあるときだけ行うこと、全体の録画、同じ人での繰り返しを避けること、一人だけ見せる方式をなるべく避けることだった。9つの中に、一人ずつ見せる方式の採用は入っていない。
対象: 研究のまとめと法曹関係者の意見 / 限界: 米国の手続きを前提にした推奨。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「一人ずつ見せれば安心」とは言い切れません。見せ方より、手続き全体の公正さが大切だと考えられています。
04日常で生かせる視点
目撃者が「選んだ」という事実だけでなく、どんな手続きで選んだのかに目を向けることが大切です。
- ニュースで「目撃者が面割りで確認」と聞いたら、どんな見せ方だったかに注意して読む。
- 裁判員になったら、二重盲検だったか、最初の確信度が記録されていたかを確かめる視点を持つ。
- 日常で「見覚えがある」と感じても、似た人と比べて選んでいないか一度立ち止まる。
05よくある質問
面割り(ラインナップ)とは何ですか
目撃者に容疑者と似た人を混ぜて見せ、犯人がいるかどうかを選んでもらう手続きです。写真で行うことも多いです。
一度に見せるのと一人ずつ見せるのでは、どちらが良いのですか
一人ずつ見せると誤りは減りますが、正しい選択も減ります。どちらが総合的に優れるかは、研究者の間でまだ意見が分かれています。
二重盲検とは何ですか
面割りを行う人も、誰が容疑者か知らない状態で実施することです。実施者の言葉や態度が、目撃者の選択に影響するのを防ぎます。
SOURCES
- Steblay, N. K., Dysart, J. E., & Wells, G. L. (2011). Seventy-two tests of the sequential lineup superiority effect: A meta-analysis and policy discussion. Psychology, Public Policy, and Law, 17(1), 99-139. https://doi.org/10.1037/a0021650
- Mickes, L., Flowe, H. D., & Wixted, J. T. (2012). Receiver operating characteristic analysis of eyewitness memory: Comparing the diagnostic accuracy of simultaneous versus sequential lineups. Journal of Experimental Psychology: Applied, 18(4), 361-376. https://doi.org/10.1037/a0030609
- Wells, G. L., Kovera, M. B., Douglass, A. B., Brewer, N., Meissner, C. A., & Wixted, J. T. (2020). Policy and procedure recommendations for the collection and preservation of eyewitness identification evidence. Law and Human Behavior, 44(1), 3-36. https://doi.org/10.1037/lhb0000359


