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記憶と目撃証言凶器があると犯人の顔を覚えていないのか。目が奪われる「凶器注目効果」の研究

刃物や銃を向けられた人は、犯人の顔を覚えていられるのでしょうか。凶器に目が引きつけられ、ほかの部分の記憶が弱くなる現象は「凶器注目効果」と呼ばれます。どの程度の影響なのか、どこまでわかっているのかを、研究をまとめた論文から見ていきます。
SUMMARY
- 19の実験をまとめた1992年のメタ分析では、凶器があると面通しで犯人を選ぶ精度が下がった。ただし影響の大きさは小さかった(効果量0.13)。
- 同じ分析で、服装などの特徴を正しく答える成績への影響は中程度(効果量0.55)で、顔の識別より大きかった。
- 2013年のメタ分析では全体の効果量は0.53だった。効果は実験室、模擬場面、現実の事件のいずれでも差がなかった。
01どんな心の仕組みが働いているのか
人が一度に注意を向けられる範囲には限りがあります。凶器のように目立つ物があると、視線がそこに集まり、顔や服装に向く注意が減ると考えられています。
なぜ凶器に目が向くのかには、2つの説明があります。ひとつは、恐怖で気持ちが高ぶり、注意の範囲が狭くなるという説明です。
もうひとつは、その場にあるはずのない珍しい物だから目が向く、という説明です。たとえば喫茶店で銃が出てくれば、脅されていなくても目を引きます。どちらがどの程度効いているかは、まだ決着していません。
02研究でわかっていること
凶器があると目撃者の記憶は落ちます。ただし、犯人を選ぶ精度より、服装などの細部を答える成績への影響のほうが大きいことがわかっています。
Steblay(1992)[1]
凶器注目効果を調べた19の検証をまとめたメタ分析(複数の研究結果を統計的にまとめる方法)。凶器があると、面通しで犯人を正しく選ぶ精度が下がった。ただし影響の大きさ(効果量)は0.13と小さかった。服装などの特徴を正しく答える成績への影響は0.55と中程度だった。
対象: 19の実験的な検証 / 限界: 多くは実験で、実際の事件の目撃者ではない。
Fawcettら(2013)[2]
凶器注目効果の研究を改めてまとめたメタ分析。凶器があることによる記憶の低下は全体で効果量0.53だった。記憶を確かめるまでの時間、凶器を見ていた時間、脅威の強さによって効果の大きさは変わった。一方、実験室、模擬場面、現実の事件という場面の違いでは差がなかった。
対象: 凶器注目効果の研究群 / 限界: 効果の大きさは時間や脅威などの条件で大きく変わる。
Fawcettら(2016)[3]
凶器注目効果の主な知見を見直した総説。凶器がある場面では、犯人や状況の記憶がおおむね悪くなるとまとめた。この効果は実務の参考にできるほど頑健だと結論づけた。そのうえで、目撃者がその場で凶器を予想していたかなど、事件の状況を考える必要があると述べている。
対象: 研究の総説 / 限界: 新しいデータではなく、既存研究の整理。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「凶器があれば犯人の顔は覚えていない」は言いすぎです。影響は確かにありますが、顔の識別への影響は小さく、場面によって大きさが変わります。
04日常で生かせる視点
凶器があった事件の証言は、顔よりも服装や細部の記述のほうが揺らぎやすい、と知っておくと役立ちます。
- 報道で「犯人の服装は〜」と細かく伝えられていても、凶器があった場面では細部ほど不確かになりやすいと考える。
- 裁判員として証言を聞くときは、凶器を見ていた時間や、記憶を確かめるまでの日数がどれくらいだったかに注目する。
- 怖い体験をした家族や友人が「よく覚えていない」と言っても、責めずに受け止める。覚えていないのは自然な反応です。
05よくある質問
凶器注目効果とは何ですか
凶器があると目撃者の注意がそこに集まり、犯人の顔や服装などの記憶が弱くなる現象です。
凶器があると、犯人の顔はどのくらい覚えにくくなりますか
1992年のメタ分析では、面通しの精度への影響は効果量0.13と小さく、服装などの特徴の記述への影響(0.55)のほうが大きくなりました。
なぜ凶器に目が向くのですか
恐怖で注意の範囲が狭まるという説明と、その場にない珍しい物だから目を引くという説明があり、まだ決着していません。
SOURCES
- Steblay, N. M. (1992). A meta-analytic review of the weapon focus effect. Law and Human Behavior, 16(4), 413-424. https://doi.org/10.1007/BF02352267
- Fawcett, J. M., Russell, E. J., Peace, K. A., & Christie, J. (2013). Of guns and geese: a meta-analytic review of the ‘weapon focus’ literature. Psychology, Crime & Law, 19(1), 35-66. https://doi.org/10.1080/1068316X.2011.599325
- Fawcett, J. M., Peace, K. A., & Greve, A. (2016). Looking down the barrel of a gun: What do we know about the weapon focus effect? Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 5(3), 257-263. https://doi.org/10.1016/j.jarmac.2016.07.005


