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取り調べと冤罪自白を迫る取り調べと、話を聞く取り調べ。どちらが真実に近づけるのか

取り調べというと、刑事が机をたたいて自白を迫る場面を思い浮かべるかもしれません。しかし英国などでは、相手の話をじっくり聞いて情報を集める方法が広く使われています。二つのやり方で結果はどう違うのか、研究をまとめた分析から見ていきます。
SUMMARY
- 5つの実地研究と12の実験研究をまとめた2014年のメタ分析では、話を聞く方法は真実の自白を保ちつつ虚偽自白を減らし、問い詰める方法は真実と虚偽の両方の自白を増やした。
- 29の実験研究(81の効果量)をまとめた2024年の更新版では、問い詰める方法は、話を聞く方法に比べて虚偽自白の見込み(オッズ)が約4.4倍高かった。
- 英国(イングランドとウェールズ)では1990年代初めに、自白を得ることより事実を集めることを目的とした「PEACE」という全国共通の取り調べ方法が導入された。
01どんな心の仕組みが働いているのか
問い詰める取り調べは「この人が犯人だ」という前提から始まります。そのため、相手の否定を打ち消し、前提に合う答えを引き出す方向に進みやすくなります。
研究では、取り調べを大きく二つに分けます。一つは「糾問型(きゅうもんがた)」です。罪を前提に問い詰め、否定を認めず、心理的な圧力をかけて自白を求めます。米国やカナダで主に使われてきました。
もう一つは「情報収集型」です。信頼関係をつくり、相手に自由に話してもらい、よく聞いて事実を集めます。英国のPEACEは、準備と計画、関係づくりと説明、供述を聞く、終了、評価の五つの段階から名づけられました。
02研究でわかっていること
実験では、話を聞く取り調べは真実の自白を減らさず、虚偽の自白を減らしました。問い詰める取り調べは、無実の人の自白まで増やしました。
Meissnerら(2014)[1]
実際の容疑者を調べた実地研究5件と、真実がわかっている実験研究12件をまとめたメタ分析。実地研究では、どちらの方法も単純な質問より自白を引き出しやすかった。実験研究では、話を聞く方法は真実の自白を保ち、虚偽の自白を減らした。問い詰める方法は、真実と虚偽の両方の自白を増やした。
対象: 実地研究5件・実験研究12件 / 限界: 研究の数が少なく、結論は暫定的とされる。
Catlinら(2024)[2]
2014年の分析を更新したキャンベル共同計画の系統的レビュー。29の実験研究から81の効果量を分析した。問い詰める方法は、単純な質問より約3.0倍、話を聞く方法より約4.4倍、虚偽自白の見込みが高かった。話を聞く方法は、単純な質問より真実の自白が約2.4倍多かった。
対象: 主に米国の大学生を対象にした模擬の取り調べ実験 / 限界: 実際の事件とは状況が違う。問い詰める方法と話を聞く方法の真実の自白の差は、統計的にはっきりしなかった。
Kassinら(2010)[3]
警察の取り調べについての総説(白書)。英国では1992年より前、取り調べの正式な訓練はなく、主な目的は自白を得ることだったと述べる。冤罪事件を受けて全国共通の訓練が作られ、事実を集めることを目的とするPEACEが広まった。英国の取り調べは米国より対決的でなく、すべて電子的に記録されると紹介している。
対象: 各国の制度と研究の文献 / 限界: 総説であり、PEACEの効果を直接比べた実験ではない。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「厳しく問い詰めないと犯人は自白しない」は思い込みです。話を聞く方法でも真実の自白は得られ、無実の人を巻き込みにくいことが示されています。
04日常で生かせる視点
相手を問い詰めるより、話を聞いて事実を集めるほうが、真実に近づきやすいという視点です。
- 取り調べに関するニュースでは、どんな方法で話を聞いたのか、録画があるかに注目する。
- 裁判員になったら、自白が問い詰めの末に出たものか、本人の自由な説明から出たものかを考える。
- 家庭や職場で事情を聞くときも、決めつけずに「何があったか教えて」と話してもらうほうが、正確な情報が集まりやすい。
05よくある質問
PEACEモデルとは何ですか
英国で使われている取り調べの方法です。準備と計画、関係づくりと説明、供述を聞く、終了、評価の五つの段階の頭文字から名づけられました。
話を聞く取り調べでは、自白は減りませんか
実験をまとめた分析では、話を聞く方法は真実の自白を減らしませんでした。一方で虚偽の自白は減りました。
実際の事件でも同じ結果になりますか
まだはっきりしません。分析の多くは大学生を対象にした模擬実験で、研究者は実地での研究がさらに必要だとしています。
SOURCES
- Meissner, C. A., Redlich, A. D., Michael, S. W., Evans, J. R., Camilletti, C. R., Bhatt, S., & Brandon, S. (2014). Accusatorial and information-gathering interrogation methods and their effects on true and false confessions: a meta-analytic review. Journal of Experimental Criminology, 10(4), 459-486. https://doi.org/10.1007/s11292-014-9207-6
- Catlin, M., Wilson, D. B., Redlich, A. D., Bettens, T., Meissner, C. A., Bhatt, S., & Brandon, S. E. (2024). Interview and interrogation methods and their effects on true and false confessions: A systematic review update and extension. Campbell Systematic Reviews, 20(4), e1441. https://doi.org/10.1002/cl2.1441
- Kassin, S. M., Drizin, S. A., Grisso, T., Gudjonsson, G. H., Leo, R. A., & Redlich, A. D. (2010). Police-induced confessions: Risk factors and recommendations. Law and Human Behavior, 34(1), 3-38. https://doi.org/10.1007/s10979-009-9188-6


