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集団と同調非常時に群衆はパニックになるのか。「パニック神話」と、助け合いを生む集団の力

映画やニュースでは、火事や災害のとき、群衆が我先に逃げ出す場面がよく描かれます。では実際に、人は非常時にパニックになるのでしょうか。被災した人への聞き取りや、火災時の行動の研究からわかってきたことを紹介します。
SUMMARY
- 11件の緊急事態を経験した21人への聞き取りでは、「居合わせた人どうしの一体感が強いほど助け合いが増え、パニックのような行動が減る」という考えが、おおむね支持された。
- この一体感は、もともとの知り合いでなくても、同じ危険を経験することで生まれていた。
- 2019年の総説は、さまざまな災害の研究から、群衆の中のパニックはまれで、被災した人どうしが助け合うことが一貫してみられるとまとめ、12の提言を示した。
01どんな心の仕組みが働いているのか
非常時には、見知らぬ人どうしにも「同じ目にあっている仲間だ」という感覚が生まれやすくなります。この感覚が助け合いや協力を支えます。
昔の群衆心理学では、人は群衆の中で理性を失い、我先に逃げると考えられてきました。これが「集団パニック」の考え方です。
近年の研究は、社会的アイデンティティ(自分をある集団の一員と感じること)に注目しています。危険を共にすると、その場の人々に一体感が生まれます。研究者はこれを集団のレジリエンス(困難から立ち直る力)と呼び、助け合いの土台になると考えています。
02研究でわかっていること
非常時の大規模なパニックはまれです。被災した人どうしが助け合い、協力することが、さまざまな災害で一貫してみられます。
Druryら(2009)[1]
11件の緊急事態を経験した21人に聞き取りをし、居合わせた人々への一体感が強い人と弱い人を比べた。分析は「一体感が強いほど助け合いが増え、パニックのような行動が減る」という考えをおおむね支持した。この一体感は、もともとの関係ではなく、危険を共に経験したことから生まれていた。
対象: 11件の緊急事態の生存者21人 / 限界: 人数が少なく、事後の聞き取りに基づく。
Fahyら(2012)[2]
火災時の人の行動を、生存者への聞き取りや事例から調べた。パニックは火災の中でごくまれにしか起きていなかった。それでも「パニック」という言葉は、報道だけでなく防火の専門家にも使われ続けていると指摘した。
対象: 実際の火災の聞き取りと事例 / 限界: 調べられた火災は一部に限られる。
Druryら(2019)[3]
緊急事態と災害の研究をまとめた総説。パニックはまれで、被災した人どうしが助け合うことが一貫してみられた。一方で「知らせるとパニックになる」という思い込みが、情報を伏せる対応につながってきたと指摘し、12の提言を示した。パニックがないという研究が多くても、例外がないとは言い切れないとも述べている。
対象: 既存研究と英国の緊急対応の手引き / 限界: 新しいデータではなく、提言を含む総説である。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「非常時に群衆はパニックになる」は思い込みです。実際はパニックはまれで、助け合いのほうがよく見られます。
04日常で生かせる視点
非常時の周りの人は、敵ではなく協力し合える仲間になりやすい。そう知っておくことが落ち着いた行動の支えになります。
- 事故や災害のニュースで「パニックが起きた」とあっても、実際に何が起きたのか(出口が足りなかった等)を確かめて読む。
- 裁判員として事故の経緯を聞くとき、「人がパニックになったから」だけで説明を終わらせず、情報や設備の問題も考える材料にする。
- 非常時には「落ち着いて」と言うだけでなく、「あちらの出口へ」など具体的な行動を周りの人に伝える。
05よくある質問
パニック神話とは何ですか
非常時には群衆がパニックになり、我先に逃げるという思い込みです。研究では、実際のパニックはまれだとわかっています。
非常時に人はどう行動しますか
被災した人どうしが助け合い、協力することが多いとされています。同じ危険を経験すると、見知らぬ人どうしにも一体感が生まれます。
パニックは全く起きないのですか
まれだとされていますが、全く起きないとは言い切れません。研究者自身も、例外がありうると認めています。
SOURCES
- Drury, J., Cocking, C., & Reicher, S. (2009). Everyone for themselves? A comparative study of crowd solidarity among emergency survivors. British Journal of Social Psychology, 48(3), 487-506. https://doi.org/10.1348/014466608X357893
- Fahy, R. F., Proulx, G., & Aiman, L. (2012). Panic or not in fire: Clarifying the misconception. Fire and Materials, 36(5-6), 328-338. https://doi.org/10.1002/fam.1083
- Drury, J., Carter, H., Cocking, C., Ntontis, E., Tekin Guven, S., & Amlôt, R. (2019). Facilitating Collective Psychosocial Resilience in the Public in Emergencies: Twelve Recommendations Based on the Social Identity Approach. Frontiers in Public Health, 7, 141. https://doi.org/10.3389/fpubh.2019.00141


