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取り調べと冤罪

犯人像の推定(プロファイリング)はどこまで当たるのか。40年・426件の研究が示した「効果の検証の少なさ」

約11分で読めます 出典照合済み(2026-10-07)

街灯に照らされた夜の通り
Photo: PattayaPatrol / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AI RESEARCH公開された研究と公的統計をAIが調べて整理しました。実在の事件を興味本位で扱わず、犯罪の手口の詳細は書きません(出典は末尾)。

ドラマでは、プロファイラーが現場を見ただけで犯人の年齢や仕事、性格まで言い当てます。では現実のプロファイリングは、どこまで当たるのでしょうか。40年分の研究をまとめた2018年のレビューによると、犯人像を推定する手法は広く使われてきました。それなのに、本当に当たるのかを確かめた研究は、とても少なかったのです。

SUMMARY

  1. 1976〜2016年の426件の文献を調べた2018年のレビューでは、犯人像の推定がどれだけ役立つかを評価した研究はとても少なかった。
  2. プロのほうが正確だという研究もあるが、方法に批判がある。2021年のレビューは「統計的な裏づけはまだない」と結論した。
  3. 一方、連続事件が同じ犯人によるものかの判断(事件リンク分析)は、研究の中で中程度から高い精度を示している。

01どんな心の仕組みが働いているのか

プロファイリングは「犯行のしかたに、犯人の性格や暮らしが表れる」という前提に立っています。この前提が、研究ではまだ十分に確かめられていません。

プロファイリングとは、犯行現場の様子や犯行の特徴から、まだ捕まっていない犯人の年齢、生活ぶり、性格などを推定する手法です。捜査の範囲をしぼる手がかりとして、世界中の警察で使われてきました。

この手法は、大きく2つの前提に支えられています。1つは、同じ人は場面が変わっても似たふるまいをする、という一貫性の前提です。もう1つは、似た犯行をする人どうしは、性格や経歴も似ているという前提です。研究者はこれを「ホモロジー(相同性)の仮説」と呼びます。

2015年の論文は、それまでの研究がこのホモロジーの証拠を見つけるのに苦労してきたと整理しています。犯行が似ていても、犯人の経歴まで似ているとは限らないということです。

専門家の判断が思いこみに引っぱられる問題は鑑定の確証バイアスの記事で、人がうそを見抜けるかはうそを見抜く正解率の記事で紹介しています。

02研究でわかっていること

犯人の人物像を言い当てる力は、まだ確かめられていません。ただし、同じ犯人による事件かを見分ける技術や、住んでいる地域の推定には、一定の裏づけがあります。

426件2018年のレビューが調べたプロファイリングの文献の数(1976〜2016年)
36人「秩序型・無秩序型」の分類のもとになった、面接・事例の対象となった、性的な殺人をした男性の数
8本2021年のレビューが妥当性を検討した論文の数。結論は「統計的な裏づけはまだない」
85人犯行の特徴から前科を予測できるかを比べた2009年の研究の対象者数

わかっていることを、手法ごとに分けると次のようになります。

FoxとFarrington(2018)[1]

1976〜2016年に出たプロファイリングの文献426件を体系的に調べた。研究の厳密さは年々よくなっていたが、しっかりしたデータから犯人像を作った研究は少なく、プロファイリングの効果を評価した研究はさらに少なかった。主な犯罪ごとの犯人像にはくり返し出てくるテーマもあったが、型の数や名前、説明は研究ごとに大きく違った。一方、同じ犯人による事件かを判断する研究をまとめると、中程度から高い精度だった。

対象: 1976〜2016年の文献426件 / 限界: 犯人像の推定そのものの効果を評価した研究は、ごく少なかった。

Kocsis(2003)と、Bennellら(2006)の批判[2][3]

Kocsisは、さまざまなグループに同じプロファイリングの課題を解かせ、正確さと必要な技能を調べた一連の研究をまとめた。その結果は、プロのほうが他のグループより正確だという主張を「ある程度支持する」ものだった。これに対しBennellらは、研究の方法と考え方に多くの問題があり、データは結論の多くを支えていないと批判した。

対象: 予測課題に取り組んだ複数のグループ / 限界: Kocsisは2006年に反論しており、論争は決着していない。

RibeiroとSoeiro(2021)[4]

プロファイリングの妥当性を確かめようとした研究を体系的に探し、8本の論文を分析した。その結論は、この手法は統計的にはまだ裏づけられていない、というものだった。これまでの検証の試みには大きな問題があると指摘している。

対象: 体系的な文献検索で選ばれた8本の論文 / 限界: 対象の論文数が少なく、その方法の問題点の整理が中心。

Goodwillら(2009)[5]

面識のない相手への性的暴行の犯人85人の資料で、犯行の特徴から前科を予測できるかを比べた。よく知られた3つの分類法の中ではFBIの「力と怒り」の分類がもっともよかった。しかし、犯行を型にまとめず、個々の行動をそのまま組み合わせた統計的な予測のほうが、3つの分類法をはるかに上回った。

対象: 85人の犯罪者の記録 / 限界: 予測したのは前科の有無で、犯人の性格や生活ではない。

Snookら(2002)[6]

米国の連続殺人犯10人について、それぞれ5か所の犯行地点を示した地図を見せ、住んでいる場所を予想させた。「家から近いほど犯行が多い」「犯行地点を囲む円の中に住んでいる」という2つの経験則を教わった21人は、予想の精度が上がった。その精度は、専用の地理的プロファイリングのシステムと統計的に差がなかった。

対象: 経験則を教わる群と比較群、各21人 / 限界: 著者自身が「予備的な比較」と位置づける小さな実験。

03よくある思い込みと、研究が示す実際

「プロファイラーは犯人像を言い当てる」は、研究では確かめられていません。有名な分類も、少ない事例から作られ、批判を受けてきました。

MYTH / 思い込み経験を積んだプロファイラーは、犯人の年齢や性格をぴたりと言い当てられる。
FACT / 研究では2018年のレビューでは、効果を評価した研究そのものがとても少なかった。プロのほうが正確だという研究には、方法への強い批判があります。2021年のレビューは、統計的な裏づけはまだないと結論しました。
MYTH / 思い込み犯人は「秩序型」と「無秩序型」の2つに分けられる。
FACT / 研究ではこの分類は1970年代に、性的な殺人をした男性36人への面接と事例から作られました。方法と妥当性には強い批判があります。2002〜2024年には、性的な殺人だけでも19通りの分類が研究で提案され、型の数も研究ごとに違います。
MYTH / 思い込み犯行が似ていれば、犯人の生い立ちや性格も似ている。
FACT / 研究ではこの前提(ホモロジーの仮説)は、研究で証拠を見つけるのに苦労してきたと2015年の論文は整理しています。2009年の研究では、犯行を型に分けるより、個々の行動を組み合わせたほうが前科をよく予測しました。

04日常で生かせる視点

「専門家が言うから当たる」ではなく、その推定が研究で確かめられているかを見る視点が役立ちます。言い当てたように見える話には、外れた予想が数えられていないことがあります。

05よくある質問

プロファイリングは本当に当たるのですか

犯人の性格や生活ぶりを言い当てる意味でのプロファイリングは、当たると確かめられていません。2018年のレビューは40年・426件の文献を調べ、効果を評価した研究はとても少ないと結論しました。2021年のレビューも、統計的な裏づけはまだないとしています。

プロのプロファイラーは素人より正確なのですか

はっきりしていません。プロのほうが正確だったという研究はありますが、別の研究者たちは、その研究の方法には問題があり、データは結論の多くを支えていないと批判しました。この論争は決着していません。

同じ犯人による連続事件かどうかは見分けられるのですか

研究の中では、ある程度できます。犯行の特徴から同じ人物の犯行かを判断する研究(事件リンク分析)は、2018年のメタ分析で中程度から高い精度を示しました。犯人像の推定とは別の技術です。

「秩序型・無秩序型」の分け方は今も正しいとされているのですか

今も後の分類に影響を残していますが、方法と妥当性には強い批判があります。もとになったのは性的な殺人をした男性36人への面接と事例でした。2002〜2024年には、性的な殺人だけでも19通りの分類が提案され、型の数も研究ごとに違います。

SOURCES

  1. Fox, B., & Farrington, D. P. (2018). What have we learned from offender profiling? A systematic review and meta-analysis of 40 years of research. Psychological Bulletin, 144(12), 1247-1274. https://doi.org/10.1037/bul0000170
  2. Kocsis, R. N. (2003). Criminal psychological profiling: Validities and abilities. International Journal of Offender Therapy and Comparative Criminology, 47(2), 126-144. https://doi.org/10.1177/0306624X03251092
  3. Bennell, C., Jones, N. J., Taylor, P. J., & Snook, B. (2006). Validities and abilities in criminal profiling: A critique of the studies conducted by Richard Kocsis and his colleagues. International Journal of Offender Therapy and Comparative Criminology, 50(3), 344-360. https://doi.org/10.1177/0306624X05277660
  4. Ribeiro, R. A. B., & Soeiro, C. B. B. M. (2021). Analysing criminal profiling validity: Underlying problems and future directions. International Journal of Law and Psychiatry, 74, 101670. https://doi.org/10.1016/j.ijlp.2020.101670
  5. Goodwill, A. M., Alison, L. J., & Beech, A. R. (2009). What works in offender profiling? A comparison of typological, thematic, and multivariate models. Behavioral Sciences & the Law, 27(4), 507-529. https://doi.org/10.1002/bsl.867
  6. Snook, B., Canter, D., & Bennell, C. (2002). Predicting the home location of serial offenders: A preliminary comparison of the accuracy of human judges with a geographic profiling system. Behavioral Sciences & the Law, 20(1-2), 109-118. https://doi.org/10.1002/bsl.474
  7. Beauregard, E., & Chopin, J. (2025). "Sorting things out": A scoping review of sexual homicide typologies. Behavioral Sciences & the Law, 43(4), 419-435. https://doi.org/10.1002/bsl.2722
  8. Kocsis, R. N., & Palermo, G. B. (2015). Disentangling criminal profiling: Accuracy, homology, and the myth of trait-based profiling. International Journal of Offender Therapy and Comparative Criminology, 59(3), 313-332. https://doi.org/10.1177/0306624X13513429