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なぜ人は罪を犯すのか暴力的なゲームは犯罪を増やすのか。メタ分析どうしの論争と「攻撃性」と「犯罪」の違い

事件が起きると「暴力的なゲームの影響では」と語られることがあります。この問いは、心理学者の間でも長く論争が続いてきました。大きな研究のまとめどうしで結論が分かれる理由と、「攻撃性」と「犯罪」の違いを整理します。
SUMMARY
- 2010年のメタ分析は、暴力的なゲームが攻撃的な行動や考えを増やし、思いやりを減らす原因になると結論づけた。
- 子どもと10代を対象にした101件の研究のまとめでは、ゲームと攻撃性の相関はr=0.06で、影響はごく小さいとされた。
- 約2万1,000人の若者を追った28の集団のまとめでは相関はr=0.059で、方法がしっかりした研究ほど0に近かった(r=0.012)。
01どんな心の仕組みが働いているのか
研究で測っているのは、多くの場合「攻撃性」です。攻撃性は、犯罪とは別のものです。
攻撃性とは、人を傷つけようとする考えや気持ち、行動のことです。研究では、質問紙や実験室での軽い行動で測ることが多くあります。これは、実際の暴力犯罪とは大きく異なります。
暴力的な場面を見たり演じたりすると、攻撃的な考えが浮かびやすくなるという説明があります。一方で、その影響は短く小さいもので、日常の行動や犯罪にまでつながる証拠は弱いという見方もあります。研究者の間でも評価が分かれています。
02研究でわかっていること
暴力的なゲームと攻撃性の関係は、あっても小さいものです。研究の方法がしっかりしているほど、関係は弱くなる傾向があります。
Andersonら(2010)[1]
日本と欧米の研究をまとめたメタ分析。暴力的なゲームは、攻撃的な行動・考え・気持ちを増やし、共感や人を助ける行動を減らしていた。6つの結果すべてで意味のある効果が見られ、著者らは原因となる危険因子だと結論づけた。
対象: 実験・調査・追跡研究 / 限界: 測っているのは攻撃性で、犯罪そのものではない。
Ferguson(2015)[2]
子どもと10代を対象にした101件の研究をまとめた。ゲームと攻撃性の相関はr=0.06、人を助ける行動の減少はr=0.04で、影響はごく小さかった。攻撃性の研究には、目立つ結果ほど発表されやすい偏り(出版バイアス)が残っていると指摘した。
対象: 101件の研究 / 限界: 暴力的でないゲームも含めた分析がある。
Drummondら(2020)[3]
若者を時間をかけて追った28の集団(約2万1,000人)をまとめた。暴力的なゲームと攻撃性の相関はr=0.059だった。追跡期間が長いほど効果は小さく、方法がしっかりした研究ではr=0.012と、0と区別できなかった。
対象: 28の追跡研究 / 限界: 測っているのは攻撃性で、犯罪ではない。
03よくある思い込みと、研究が示す実際
「暴力的なゲームが犯罪を生む」と言える証拠はありません。攻撃性との関係も、あっても小さなものです。
04日常で生かせる視点
事件の原因を1つの趣味に求める説明には、慎重になる視点が役立ちます。
- 事件の報道で「ゲームの影響」と語られたら、研究が測っているのは攻撃性であり、犯罪ではないことを思い出す。
- 裁判員として被告の趣味が話題になっても、それだけで行動の原因と決めつけない。
- 子どものゲームについて話すときは、内容への心配と、犯罪につながるという話を分けて考える。
05よくある質問
暴力的なゲームは攻撃性を高めますか
2010年のメタ分析は高めると結論づけましたが、2015年と2020年のまとめでは相関はr=0.06前後とごく小さく、評価が分かれています。
なぜ研究によって結論が違うのですか
何を攻撃性として測るか、目立つ結果ほど発表されやすい偏りをどう扱うかなどで結果が変わります。方法がしっかりした研究ほど関係は弱い傾向がありました。
ゲームと犯罪の関係はわかっていますか
ここで紹介した研究はいずれも攻撃性を測ったもので、犯罪を直接測ってはいません。ゲームが犯罪を増やすという証拠は示されていません。
SOURCES
- Anderson, C. A., Shibuya, A., Ihori, N., et al. (2010). Violent video game effects on aggression, empathy, and prosocial behavior in Eastern and Western countries: A meta-analytic review. Psychological Bulletin, 136(2), 151-173. https://doi.org/10.1037/a0018251
- Ferguson, C. J. (2015). Do Angry Birds Make for Angry Children? A Meta-Analysis of Video Game Influences on Children's and Adolescents' Aggression, Mental Health, Prosocial Behavior, and Academic Performance. Perspectives on Psychological Science, 10(5), 646-666. https://doi.org/10.1177/1745691615592234
- Drummond, A., Sauer, J. D., & Ferguson, C. J. (2020). Do longitudinal studies support long-term relationships between aggressive game play and youth aggressive behaviour? A meta-analytic examination. Royal Society Open Science, 7(7), 200373. https://doi.org/10.1098/rsos.200373


